注射は平気だが射す瞬間だけは直視できない

生まれて初めて献血をした。

前から興味があったし、時間もあったし、ということで足は自然と受付へ。
私こんな気軽な気持ちでいいんだろうか不謹慎じゃなかろうかとかちょっと考えながら手続きを済ませ、血圧測定。血圧の良さを誉められてかなり嬉しかった。単純だ。
そういえば、注射で泣いたことがない。小学校の時にクラスメートが騒ぐのを不思議そうに眺めてたっけ。チクッとするけどそんなの平気。ただし直視はできない。
容器に吸い込まれていく自分の血を見ながら、血の色って赤黒いんだなーあんまり綺麗な色じゃないなー、とか考えていた。

なんかこれ小説のネタにならないかなと思考をめぐらせてみたものの、血と言えば吸血鬼しか浮かばない。
吸血鬼ネタなんてもう出尽くしてるよ!
吸血鬼を題材にした作品なんてアニメだけでも6作品は思いつく。
フィクションと吸血鬼の相性の良さは異常。
でも、なんとなくわかる気もする。

フランの昼(2)

 しゃく、しゃく。規則正しい音を立て、アイスが掘削されていきます。
「うはぁ…」
 フランさんはうっとりとアイスを頬張りました。
「あたしはね、ガラスのおさらとぎんのスプーンがアイスをよりみわくてきにするとおもうわけ。うん」
 よくわからないことを言いながらもう一口。
「(……何故わたしには食べさせてもらえないんだ?)」
 ラザさんは薄いピンクのアイスーーイチゴ味ーーを恨めしげに眺めました。
「あ、ほしいの?ダメだよ。むしばになっちゃうから」
 あげないよーきゃはははは。フランさんはわざとらしく見せびらかしながらしゃく、しゃく、しゃく。
「(拷問だ…)」

 日差しのせいでアイスどころか脳まで溶けてしまいそうな時間帯。アルナーの町は昼休みを迎えていました。
 フランさんとラザさんは、この時間帯になるといつも町へ遊びに来ます。
 ただ、いつもと違うのは、ヘリオスさんも一緒に来ていること。アイスを奢ってあげる約束をしましたからね。

「おじちゃん、アイスもういっこちょうだい」
「買わんぞ」
 ヘリオスさんが鋭く言います。
「…ぶぅ」
 フランさんは思わず唇を尖らせました。齢相応の愛くるしい表情です。
 そこへアイス屋の店主が口を挟みました。
「おいおいそれくらい買ってやれよ、お父さん」
「駄目だ。氷菓の食い過ぎは腹を壊す。というか…」
 キリキリと目尻が吊り上がり、唸るように低く一言。
「俺はまだ二十歳だ」
 店主は鷹揚にうなずき、
「そうか…。苦労したんだな」
 ポン、と肩に手を置きます。
「わかっている。みなまで言うな!わかるぞ青年!!」
「いや人の話聞けおっさん」
 ひたすら一人で盛り上がるアイス屋店主にヘリオスさんの声は届きませんでした。
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