「やぁ、ハク。厨房借りてるよ」

 白亜が買い出しから戻ると、何故かレファルがエプロン姿で優雅に笑っていた。






「実にタイミングがいいね。今クッキーが焼きあがったところだよ」

 レファルと白亜は孤児院で兄妹のように育ち、大人になった今でも白亜は孤児院に残り、レファルは仕事の合間に孤児院を訪ねることがあった。


 厨房は焼き菓子特有のいい匂いが漂っている。

 しかし白亜はどうしても食欲がわかなかった。

「何ですかこんな色こんな色とかこんな色は。クッキーとは思えない色なのですが」

「安心したまえ。全て着色料だよ。流石にここは交易都市、何でも揃う。グリーンティーラズベリーブルーベリーオレンジ…らしいがね?」

 その素材にしては色が絵の具じみていないか。

「そもそも!なんでクッキーを着色するんですか!」

「ふ。何故ならその方がカッコいいから!!

 真顔だった。

 しかもタチの悪いことに、レファルは自身の料理を美味と感じる味覚の持ち主だ。

「…色々と残念な思想は健在なんですね…」

「クリエイティブな思想と言ってくれたまえ」

「それは嫌です」


 後に、クッキーは孤児院のみんなで卒倒しそうになりながらもおいしく頂いたと記録されている。