朝食の片付けが終わり、フランさんはお洗濯の仕事を任されました。
「よいしょー!いっくよーわん太ー!」
 カゴ一杯の洗濯物をラザさんの背中に乗せて、庭の井戸まで運びます。ラザさんに手伝ってもらえば楽ちんです。
 あたりにごしごしともみ洗いの音が響き、ラザさんが隣でうつらうつらとし始めた頃、エオスさんがやって来て言いました。
「お水を飲ませて下さいな。歌い続けて喉が渇いてしまいましたの」
「どうぞー」
 エオスさんはからからと滑車を引き上げ、桶の水をごくごくと手酌で飲み、ぷはぁと息をつきました。
「ふぅ…。やっぱり井戸水は冷たくて気持ちいいですわね」
「こんどはなんのうたをうたっていたんですか?」
 もみ洗いの手を止めないようにしながらフランさんは聞いてみました。
「しいて言うならお掃除ソングですわね」
 箒や雑巾を自在に操る魔法だろうかとフランさんは考えました。
「ちょっとは綺麗にしておかないと。今日か明日か、セレネが帰って来るらしいので。」
 セレネさんは、エオスさんとヘリオスさんの妹です。お医者さんとして各地を放浪していて、夏にしか帰って来ないのだとか。
「あのぅ…、あたしもエオスさんみたいなまほーつかいになれますか?」
「うふふ。どうでしょう?訓練次第ですわね。でも、それよりも先に覚えるべきことは沢山ありますわよ?」
「ふぁい…」
 フランさんはがっくりとうなだれました。