クリント・イーストウッド監督主演作品。
BSのイーストウッド特集はちょっと古いのとかニッチなのとか扱いますね〜。権利料を抑える為なのか。この映画は観た事がなかったけれども彼の渋さに魅せられてしまいました(笑)。
うん、クリント・イーストウッド監督の作品は地味だし結構淡々としている。だがそれがいい。
派手さもない、CGもない、爆音もない、たまにはそういう映画を見たくなるんです。そう、ジャンクフードを食べた次の日にやっぱり白いご飯は美味いし最高だなっていうあの感じに似てます。
若い頃はあれだけギラついていたクリント・イーストウッドが盗みはするけど殺しはしない大泥棒(カリ城以降のルパン三世かよ)ルーサーの役をこれまたアクションシーンもなくスマートに格好良く演じてる。でもこの『目撃』のストーリーの本筋は父と娘の物語であり、「父親」としてのルーサーとしての表情と大泥棒ルーサーの顔とを対比的に分けている。
あらすじは、大富豪サリヴァンの豪邸へお宝盗みに忍び込んだルーサー。しかし金庫のある寝室へ男女2人がやって来る。サリヴァンの若き後妻と痴情を始めた相手の男は何と大統領のアランだった。
酔った勢いなのかアランはサリヴァンの後妻クリスティーヌの首を絞めようとする。クリスティーヌは咄嗟に傍らのナイフを手に取った。(アランを脅すだけのつもりだったのか否かまでは不明だが)
そこへSPの2人がクリスティーヌへ向けて発砲。大統領が恩人の妻と不倫した上に殺めようとしていたなど大スキャンダルだ。大統領補佐官は証拠を隠滅したが、事件の一部始終を目撃してしまった上証拠品を盗んだルーサーは、国家権力の魔の手が娘にも伸びたのを前に勝ち目のない敵を前に孤高奮闘する、というもの。
個人的には切れ者な刑事セス役のエド・ハリスもいい感じに存在感がありました。ルーサーが犯人だと目星をつけてあっという間に居場所を暴き出した後の会話の駆け引きによる緊張感。
それから見所はやっぱり父親に反目しながらも父を心配する娘と、娘を想い命を狙われる彼女の為に国家権力にすら立ち向かう父親の関係ですね。
2人の交わす会話は短くも少ないのだけれど醸す空気感が序盤と終盤で変わっていくのがイーストウッド監督上手いなぁと思いました。
でもアラン役のジーン・ハックマンがいかにもな小悪党過ぎて大統領役にしてはカリスマ性ないなぁとも感じてしまったり。(傷心のサリヴァンですら利用する強かさで狡賢さを出そうとしたんだろうけれど、ウォルター・サリヴァンの役者さんの方が大統領感があって更に小悪党にしか見えない)

でもって落とし前をサリヴァンにつけさせたのも微妙にモヤモヤポイント。サリヴァンは結局復讐心からアランを証拠のナイフで刺し殺しちゃうし、報道ではアランは過労自殺扱いで大統領が突然死亡したというのに禄な捜査もされてないなんて変じゃね?と考えてしまうのは私だけでしょうかね……。
−−・・・とまぁややご都合主義な点はありますが、クリント・イーストウッド監督が映画の中でホワイトハウスのスキャンダルを描いたという事が重要なんでしょうな。イーストウッドは人種差別問題とか移民問題とかそういう問題提起系映画を撮るのが好きだから。