2015-5-23 17:44
Pixivの方に掲載した二次創作です。
最近オリジナル載せてなくて本当に申し訳ないというか書くネタがないのでこちらにも、って感じになってますが、一応長編組も考えてはいるんですよ…!っていうことでひとつ。
と言うわけで(?)追記よりゲームTOAの、ある場面でのアッシュのお話。
ご興味のある方は折り畳みを開いてくださいませ。
ちなみにpixivは
こちら
話題:二次創作小説
『防衛本能』
――色が薄いな。
間近で見たのはこれが初めてじゃない。だが、まともに見たのは今回が初めてだった。
見下ろした先にある自分と同じ顔。色が薄い、と感じたのは髪の話だ。恐らく自分以外は気付かないであろうその僅かな差に、一瞬顔が歪む。
オリジナルとレプリカの差。つい先ほどその事実を告げられ、受け入れられなかったルークは剣を抜いた。望むところだった。いっそのことあの場でルークを殺してやろうかとも思った。俺の居場所を奪った奴だ。本物の“ルーク”である俺の居場所を。
しかしルークを殺したところでこれまでの自分の足跡が変わるわけではない。自分はヴァンの口車に乗せられてレプリカ情報を抜かれたあの日から聖なる焔の燃え滓でしかないのだ。今さら“ルーク”として生きようなど、そんなことを考えたりはしていない。
ガイやナタリア、懐かしい顔に会えて心が動かなかったかといえば嘘になる。だが、彼らが長年“ルーク”として親しんできたのは今自分の目の前で横たわっているこいつで、自分ではない。“ルーク”が記憶を失うまでの10年、記憶を失ってからの7年。単純に年数の問題ではない。その過ごした年月の濃さだ。だからこそガイはそう簡単にアッシュである自分を信じたりしないし、ナタリアもナタリアで何か葛藤しているのだろう。しかし。
――俺があっさり味方として受け入れられたのはお前と俺の人格の差か、それとも……
レプリカであるルークをあっさりと見限り、それまでの態度を翻すルークの仲間たちを見て何も思わなかったわけではなかった。確かにこいつは救いようのない馬鹿だ。甘やかされて育って知恵も知識も、“疑う”ということもろくに分かっていない馬鹿だ。見ていてイライラするのも分かる。『俺は悪くない』と言い張ることしかできないようなお子様だ。罵り始めたらキリがないが、本当にグズでどうしようもないのは事実だ。だが、あの場でああ言い張らなければ、奴の自我は崩壊していたかもしれない。レプリカだと知らされ、英雄になるどころかアクゼリュスを崩落させ、仲間からは突き放され。咄嗟に働いた防衛本能が、『俺は悪くない』と言わせたのだろう。
あの場には良い歳をした大人もいたというのに、誰もそのことに気付かないとはとんだお笑い種だ。別にルークが生まれてから7年しか経っていない、とかそういうことじゃない。人間の本能の問題である。決してこいつを擁護するつもりはないが――何度も言うが、こいつはどうしようもない屑だ――自分自身がそういう経験をしているからこそ、こいつの気持ちも理解できなくはない、ただそれだけだ。ルークに何もかも奪われて、自分を守るためには恨むしかなかった。憎むしかなかった。そうすることでしか己を守れなかった自分がいた。自分は何もかもをこいつに奪われた。だから同情などするつもりは一切ない。しかし分かってやれるのもきっと自分だけなのだろう、癪な話ではあるが。
気を失っているルークを横目に、鏡の前に立つ。ルークよりも濃い赤の髪。前髪を上げるようになったのは“ルーク”との決別……いや、識別のためだったか。まあ、そんなことはどうでも良い。今は動けないこいつの仲間を利用して外殻大地に戻るまで。
ティアの声が聞こえてくる。それに反応して出来損ないのレプリカ野郎も脳みそだけは起きたようだった。
俺の目を通じて世界を見て、それで何を思うか、ここからはお前次第だ。
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あとがき
アクゼリュス崩壊後のユリアシティにて、ルークの脳内意識(?)が覚醒する前の場面です。
この後ぐらいからアッシュがなんだかんだ言いつつもほんのちょっと優しくなった気がするのは、もしかしたらルークに少しぐらいは同情したのかなと思った次第です。
なお、3周してもこの前後の仲間たちのやりとりというかルークに対する態度には慣れません。
長髪ルークも短髪ルークも大好きです(あとがき関係ない)。
まあ、アッシュがルークと頭の中で会話してあげるのも、自分を通して仲間たちの様子を伝えてあげるのも、きっともう一人の自分だからなんでしょうね。
居場所を追われて非常に複雑な心境を抱えていても、何かしら思うところはあるのだろう、ってそんなことを考えました。
俺は悪くねえ!は言いすぎだが、お前の話を聞いてくれないみんなもひどかったよな、ルーク。