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廻る恋
2016.4.20.Wed 21:11
[ブン太受]

「ブン太、誕生日おめでとうさん」
お決まりのパッチンガムトラップに引っかかり、ジンジン痛む指先を押さえていたら言われたその言葉。
「は?」
当たり前のように俺は首を傾げる。
「祝う気ねぇだろい…」
「ある」
目の前の仁王はいつもと変わらず自信満々に、いけしゃあしゃあと宣った。
「ブン太をからかって遊んでいいのは俺だけの特権じゃけぇ」
「はああ?!」
「ブン太の悔しそうな顔も痛そうな顔も俺のものぜよ」

「何ふざけたこと言ってんだよ」
「ふざけてねぇっスよ!俺めっっっちゃ真面目です!」
赤也は必死なせいか顔を真っ赤にして大声を出す。
「何番目でもいいんで丸井先輩の愛人にしてくださーい」
語尾にハートをつけて言った。どう考えても冗談にしか聞こえないっつうか、喋り方とかテンションとか表情とかも普段のおふざけモード丸出しだしなぁ。俺はでかい溜め息をつく。
「ふざけてないで練習すんぞ」
俺はラケットを手に取り、赤也に背を向けた。
「丸井先輩ってなんでもお見通しなんスね〜」
赤也はあっけらかんと言う。
「ふざけんの止めますね。丸井さんとガチで付き合いたいっス」
普段はあまり耳にしないくらい真面目な声音で赤也は言った。
俺を止めるために掴まれた手首が少し痛い。

俺の手首を掴んだまま、比呂士は目を伏せた。
眼鏡の奥で睫毛が頬に影を落とす。
「丸井君、今日は私と一緒にいてください」
伏せていた目を開けて、俺を真っ直ぐに見た。意外に鋭い比呂士の目に、呆然としている俺が映っている。
「え、なんで?」
「今日は丸井君の誕生日ですよね?特別な日に一緒に過ごしたいと思うのはそんなにおかしいことでしょうか?」
比呂士は悲しそうに眉を下げた。
「変じゃねぇよ。でも…」

「でも今更恥ずかしいんだよなぁ」
「今更照れる方が恥ずかしいぜ?」
照れ隠しに髪を弄ぶ俺の背中を、ジャッカルはバシッと叩いた。
「ケーキ奢ってやるからよ。たまには二人で過ごそうぜ」
俺の腕を引くジャッカル。
「誕生日おめでとう、ブン太」

「ありがとう、幸村くん」
幸村くんが差し出した花束を受け取りながら言った。顔が熱い。
「これ、全部幸村くんが育てたの?」
花束を見ながら聞くと、幸村くんは柔らかく笑った。
「うん。カスミソウだけは花屋さんで買ったけど、他はちゃんと俺が育てたやつだから」
そこでふっと視界が暗くなる。幸村くんは俺にぐっと顔を近づけたからだ。息が吹きかかるほど近い。
「だから、大切にしてくれるかい?」
「も、勿論!でも俺、花の扱いよくわからねぇから大丈夫かなぁ」
あまりの近さにしどろもどろになっていると、幸村くんは首を振った。
「違うよ。花じゃなくて、俺のことだよ」

「えっ?!」
「なーんちゃって」
仁王は鋭かった目があっという間に細められ、満面の笑みを浮かべた。
「ブン太は楽しそうな顔が一番似合うぜよ」
仁王は呆然としたままの俺に綺麗にラッピングされた箱を差し出した。
「開けてみんしゃい。ブン太が今一番欲しいもんが入っとるぜよ」

箱を開けると、


「あれ…?」
目の前には見慣れた天井が広がっていた。夢かよ、と思いながら体を起こすと、隣で恋人が不思議そうに俺を見ていた。
「ごめん、俺、夢の中でめちゃくちゃ浮気しちった」
正直に打ち明けると、恋人は笑った。それから、どうせ自分の元に帰ってくるんだから気にしないと自信満々に言った。

END.

*****
場面の切り替わりでうまくお相手を変えてみようと書き始めたんですが、よくわからない話になりました。漫画の方が合ってるかな?
ラストはわざと本当のお相手わからなくしてみましたが、割と決まってる気が…。
こんな誕生日お祝いでもうちわけない。
ブン太くん、お誕生日おめでとうございます!



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